うちの住所はいちお横浜市だけれど、
家の半径500メートル周辺には、
ちょっとした森や田畑や川があり、四季の移ろいを楽しむことができる。
朝は鳥の声が賑やかだったり、庭の木に集っていたり、
大好きなウグイスの声もする。
窓を眺めていると、アゲハ蝶や珍しい蝶もひらひら飛んでいる。
歩いていると、蜘蛛の巣の切れたものが、顔や手足にかかったり、
夜は林の近くを、カブトムシが普通に飛んでいる。
わざわざデパートに買いにいく子どもを連れてきてあげたい気分。
そう、この季節は虫も豊富だ…。

先日は夜、ぶーんという音がしたなぁと思いながら自転車をこいでいると、
なんだか髪の毛が妙に引っ張られる感じがして、
恐る恐る手をやってみると、
…なんか虫が止まってる…。
そしてこの時季、耐え難いのは、いたるところで蝉が死んでいること。
どうして蝉に限って、玄関先とか、道端に転がっているんだろう。
他の昆虫はほとんど見かけないのに。
蝉の声は嫌いではないけれど、家の壁やベランダで鳴いているのは嫌い。

先週、富山の福光にある山で1週間過ごしていたとき、
大きなオニヤンマを何度か見かけた。
あの、黒と黄色の縞のトンボを見ると、
必ず幼稚園の頃の思い出がよみがえる。

当時も、家の横が山で、庭の柵を越えるとずーっと田んぼ、
という結構すごい場所(ちなみに、これも横浜市)に住んでいた。
山にはアケビがなり、蛇が道を横切っているようなところだった。
ある日、父が、そこらへんでオニヤンマをつかまえてきた。
籠に入れて、みんなで絵を描いた後、
こんなに大きなトンボを、小さな籠に入れてたら可哀想と逃がした。

数日後、窓を開けていたとき、
スーッと大きなトンボが家に入ってきた。
それは色鮮やかなオニヤンマ。
皆が見ている中を、優雅に旋回して、
ふと物に止まり、
しばらくして、また、スーッと出て行った。

不思議な時間だった。
きっとあのオニヤンマが遊びに来たんだね、と言っていた
あの夏のひとときが、懐かしい。